用語

「ひいては」の意味と由来・使い方・例文・「急いて」「強いて」との違いは?現役記者がサクッと解説!

「ひいては」(漢字での書き方は「延いては」)という言葉は、「喫煙は喫煙者本人の健康、ひいては家族や周囲の人の健康にも影響を及ぼす」などの形で用います。

ただし、この言葉は「急いて」「強いて」といった類似した語と混同した使い方をされたり、意味が区別されにくかったりする場合があるようです。

そこで、ここでは「ひいては」の意味と由来、使い方と併せて、「急いて」「強いて」と比較しながらそれぞれの違いについて、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が解説していきます。

「ひいては」の意味と由来・使い方・例文

image by iStockphoto

それでは、始めに「ひいては」の意味と由来、使い方を説明していきます。

「ひいては」の意味は?

まず、「ひいて」には「それが原因になって、さらには」といった意味があり、何かの物事が元になって別の事柄が続くことを表します。

そして、「ひいては」は「ひいて」を強めた言い方です。

「ひいては」の由来は?

次に、「ひいては」の由来について見ていきましょう。

「ひいて」は「ひく」に前後の文節をつなぐ接続助詞「て」が付いた「ひきて」に由来し、この音が変化して「ひいて」と言うようになったとのこと。

そして、「延いては」の「延」は「のびる・ひろがる」や「招く」を意味することから、前後を繋げる役割をしながら「広がる・招く」を意味する言葉として「延いては」が成り立ったと考えられます。

ちなみに、「文節」は「日本語の文を実際の言葉として不自然にならない程度に区切ったときの最小単位」で、たとえば「鳥が大空を羽ばたく」という文は「鳥が」「大空を」「羽ばたく」という3つの文節から成り立っています。

「ひいては」の使い方は?

次に、「ひいては」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように使用することができます。

「幼少期の体験というのは子どもの人格形成、ひいては人生全体に影響を及ぼすものだ」

「健康管理をしっかり行うことは自分のため、ひいては家族のためでもある」

「受験前のこの時期をどう過ごすかで試験の結果、ひいては高校・大学受験にも影響が及ぶことになる」

「今回の商品の開発は、我が社の発展、ひいては業界全体の活性化につながるだろう」

「黒部ダム建設事業は同電力会社の一世一代の大規模プロジェクトであり、近畿地方への電力供給、ひいては経済活動の命運が懸かっていた」

「人間は二足歩行により体躯に比して極めて大型の頭部を支える事が可能になった。 ひいては、他の動物に比べてより大型の脳を持つ事を可能にしたのである」

「その理論モデルは化学者や物理学者、ひいては数学者の研究の対象ともなった」

「ツルが生きるためには多くの餌、ひいては豊かな生態系が必要であった」

「印刷物を減らすことは手間や経費の削減、ひいては環境保護にも役立つことになる」

このように「ひいては」は、前の語・文節・句・節・文を受けて、事柄の範囲がさらに広がることを述べる場合に、接続詞的に副詞として用いることができます。

「ひいては」と混同しやすい語は?

image by iStockphoto

それでは、次は「ひいては」と混同した使い方をされたり、意味が区別されにくい「急いて(せいて)」「強いて(しいて)」について見ていきましょう。

「急いて」の意味と使い方は?

まず、「せく」という読み方をする「急く」は「急ぐ、早くしようと焦る、慌てる」ことを意味し、「急いて」は「急く」の連用形「急き」がイ音便により変形した上で、接続助詞「て」が付いた形です。

そして、「急いて」はたとえば以下のように用いることができます。

「東京にいると、無駄に気が急いて仕方がないような忙しさを感じる」

「この案件はどっしりと腰を落ち着けて取り組まねば成功しない。急いては事を仕損じるということだ」

「そんなに苛立つな。急いては事を仕損じるというだろう」

「作業を進めようと手を動かし続けたが、気ばかりが急いて中々思うようにはいかなかった」

「麦を臼で挽くときは急いてはいけません。ゆっくり丹念にひき臼で挽いてください」

「その街灯もない真っ暗闇な道のりを早く走り抜けたかったが、気が急いてばかりで体は動いてくれなかった」

なお、「気が急く」は「気持ちがはやる。気があせる」ことを意味し、「急いては事を仕損じる」は「あまりに急いで事を行うと、かえって失敗しやすく、したことが無駄になる」ことを意味することわざです。

しかし、中にはこれを「ひいては事を仕損じる」といった誤った形で用いられることがあるとのこと。

ただし上記のように、このことわざは「物事は焦ると返って失敗しやすい」ことを意味するものなので、「ひいては」ではなく「急いては事を仕損じる」となることに注意しましょう。

「強いて」の意味と使い方は?

image by iStockphoto

次の「しいて」という読み方をする「強いて」は、「あえて。無理に。無理矢理に」といった意味があり、困難や抵抗、反対などを押し切って物事を行うさまを表します。

そしてこの語は、例えば以下のような使い方ができるでしょう。

「嫌がる社員に強いてやらせても良い結果にはならないだろう」

「得意な科目は特にありませんが、強いて言うなら英語が挙げられるでしょうか」

「強いて読みたい記事もないので私は新聞を定期購読していません。だから必要なときだけ、駅の売店で買ったりしています」

「優雅に旅行しているような暇もないけれど、強いていうならヨーロッパを一周してみたい」

「彼は何か悩み事があるようですが、それを強いて詮索する必要はありません」

「風邪をひいたため食欲がなく、それでも強いて食事を摂ろうとすると鼻が詰まって味がしなかった」

「強いて」という語も「急いて」と同様、「ひいては」と混同して「しいては」と使われることがあるようですがこの用法は誤用です。

そして「強いて」は、上記のように「強いて言えば~」などの形で用いられ、「その結果、さらには」といった意味を持つ「ひいては」とは意味や使い方が異なるものとなるため、両者を区別して用いる必要があります。

「延いては」は「さらには」、「急いて」は「焦って」、「強いて」は「あえて」を意味する

以上、「ひいては」の意味と由来、使い方、「急いて」「強いて」との違いについてまとめました。

延いては」と書くことができるこの言葉は、「その結果、さらには」という意味を持ち、事柄の範囲がさらに広がることを述べる場合に接続詞的に副詞として用います。

またこの語は、類似した音を持つ「急いて(せいて)」「強いて(しいて)」と混同されやすく、「急いては事を仕損じる」ということわざを「ひいては事を仕損じる」「しいては事を仕損じる」などと誤用することがあるようです。

しかし、「急いて」は「急いで。焦って」、「強いて」は「あえて。無理に」とまったく異なる意味を表しますので、区別がしやすい字面を念頭に、場面に応じて適切に使い分けられるようにすると良いでしょう。

Share:
KHajime