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「邪推」の意味と使い方・例文・「憶測」「猜疑」との違いは?新聞記者歴29年の筆者が解説!

みなさんは「邪推」(じゃすい)という言葉を聞いたことがありますか?「~を邪推する」「邪推に過ぎない」などの形で用いられる言葉です。とはいえ、それほど日常的に用いる語ではなく、具体的にどのようなことを表すのか、疑問をお持ちの方も多いでしょう。さらに「憶測」「猜疑」といった近い意味のある語とはどのような違いがあるのかも気になるところです。では、「邪推」の詳しい意味と使い方、「憶測」「猜疑」との違いを、新聞記者歴29年の筆者が解説していきます。

「邪推」とは

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「邪推」「憶測」「猜疑」、3つの言葉はいずれも、確信が持てないことをあれこれと考えるというところが共通点です。しかし、それぞれ意味やニュアンスの違いから、置き換えることはできません。

それでは、以下に「邪推」の意味と使い方、また「憶測」「猜疑」との違いを、詳しく説明します。

「邪推」の意味

「邪推」には「他人の行為・言動を悪い方に推測すること。ひがみから悪く想像して考えること」という意味があります。

「邪」は「ねじけて悪い、正しくないさま」を表し、「推」はこの場合「考えや判断を前に押し出す、推し量る」ということです。

つまり、他人の行為・言動をストレートに受け取ることができず、良くない方向に推測して解釈してしまうことを表す語となっています。

「推測」とは「既知の事実によって推し量ること」。「邪推」は、何らかの元になる情報から他の事柄の見当をつける(推測する)のだけれども、ネガティブな感情が作用してその方向が悪いほうにねじ曲がるということです。良い意味ではまず使われないので、気を付けましょう。

「邪推」の使い方

次に、「邪推」の使い方を具体的に例文を使って紹介していきましょう。言い回しとしては「邪推する・される」「邪推深い」などとするのが一般的です。

例文:

「彼がスレンダーな美人と歩いているところを目撃し、二人の仲を邪推する」

「最近帰りが遅いことを邪推した妻と無駄な喧嘩をする」

「彼は邪推深い人なので、疑いを招く言動は控えるようにしている」

「後輩が先に出世すると知り、その理由を邪推する」

「これほどまで彼に邪推されなければならない理由は考えつかない」

「憶測」「猜疑」とは

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では次に、似た意味のある「憶測」「猜疑」という語の詳しい意味と違いについて見ていきます。どちらも「邪推」と同じく、飛躍して考えることと関係していますが、どこが違うのでしょうか?

「憶測」の意味

「憶測」とは「いいかげん・無責任に推測すること。当て推量」という意味です。

「憶」はこの場合「推測する、おもんぱかる」ことを表し、「測」は「推し量る」意味のはかるとなります。

つまり、信ぴょう性を持った確たる根拠がないまま、いいかげんな想像力だけであれやこれやと考えることです。ただし、根拠となる情報が少ないだけで、たとえ当て推量であっても、100%事実と異なるとまでは言い切れません。その点では、事実と異なるという意味を持つ「ウソ(嘘)」や「デマ」とは少し違います。

「猜疑」の意味

「猜疑」とは「人を疑ったり、ねたんだりすること」という意味です。「猜疑心」「猜疑の目」「猜疑の色」といった形でよく使われます。

「猜」と「疑」、どちらも「うたがう」と読むことができる漢字です。「ねたましい気持ちから、信じられずに怪しむ」という意味の漢字が2つ続いた熟語ですから、とてつもなく怪しんでいる状態を指す語だといえるでしょう。

ちなみに、「ねたむ(妬む)・ねたましい(妬ましい)」とは「他人の状況・様子が自分と比べて上回っている・恵まれていると感じて、くやしがり、憎たらしく思う感情」です。したがって、「猜疑」という言葉も「邪推」と同様に、ネガティブな感情=悪意が出発点となっています。

使い方の例と意味・ニュアンスの違い

では、3つの言葉の意味・ニュアンスの違いを、例文を使って解説していきましょう。

「憶測」:「彼女が町を出た理由についてさまざまな噂が飛び交ったが、どれも憶測の域を出なかった」

(彼女が町を出た理由についてさまざまな噂が飛び交ったが、どれも根拠のないいいかげんな推測に過ぎなかった)と解釈できる文章ですが、仮に「憶測」を「邪推」とすると(あの女のことだからどうせ失敗したに違いないと思われた)といったニュアンスに変わります。

「猜疑」:「突然馴れ馴れしく接してくるようになった知人を猜疑の目で見る」

こちらは(突然馴れ馴れしく接してくるようになった知人に対して、自分を利用してやろうという、どこか腹黒い考えを持っているのではないかと疑う)と解釈できる文章です。「猜疑」を「邪推」としてみると、文意自体はそう大きく変化しませんが、「怪しむ」というニュアンスが弱まりました。

「邪推」:「妻が旧友と会うと言い、おしゃれをしていそいそと外出するところを見て、友人との仲を邪推する」

(妻が旧友と会うと言い、おしゃれをしていそいそと外出するところを見て、その友人とはよからぬ付き合いではなかろうかと考える)と解釈できます。「邪推」を「憶測」とすると、「悪意をもって悪いほうに考える」というニュアンスが弱まるでしょう。逆に「猜疑」とすると、非常に怪しんでいることが強調されます。

つまり、「邪推」「憶測」「猜疑」はいずれも、分からないことをいろいろと想像する行為ではありますが、それぞれのニュアンスと使い方の違いは、意外に明確でした。ポイントは「悪意」です。

「悪意」の強調度でならべると、以下のようになります。

「猜疑(憎たらしい)」>「邪推(素直に考えられない)」>「憶測(いいかげん)」

 

ニュアンスの違いを理解しよう

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以上、「邪推」の意味と使い方、また「憶測」「猜疑」との意味・ニュアンスの違いについてまとめました。

「邪推」は「他人の行為・言動を悪い方に推測すること」を言い表し、「邪推する」「邪推に過ぎない」などの形で用います。「憶測」は「いいかげん・無責任に推測すること」を言い表し、「憶測を呼ぶ」「憶測が飛ぶ」などの言い回しを使うとよいでしょう。また、「猜疑」は「人を疑ったり、ねたんだりすること」を指しており、「猜疑心」「猜疑の目」「猜疑の色」などの形で使われています。

それぞれ「悪意」というキーワードにおいて、異なるニュアンスを持っており、適切な場面で使い分けることが可能です。なお、いずれもポジティブな意味では使われない言葉ですから、日常使うときには、慎重を期すとよいのではないかと思います。

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keika03