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「逢瀬」の意味と使い方・例文・「逢引」との違いは?新聞記者歴29年の筆者が解説!

みなさんは「逢瀬(おうせ)」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?文学作品などでは「逢瀬を重ねる」などの形で用いられています。少し古風でロマンチックな印象を与える言葉ですが、具体的にはどのようなことを表しているのか、説明するのは意外に簡単ではありません。また、似たイメージを持つ「逢引(あいびき)」とはどのような違いがあるのかも、気になるところです。今回の記事では「逢瀬」の意味と使い方、また「逢引」との違いについて、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説していきます。

「逢瀬」とは

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「逢瀬」の「逢」に本来「おう」という読み方はなく(音読みではホウ)、「おうせ」というのは難読熟語に分類されるようです。

では、そのような「逢瀬」の意味と使い方を説明していきましょう。

「逢瀬」の意味

「逢瀬」の直接の意味は「(男女が)人目をしのんで会うこと」です。

しかし、一般的にはさらに多くの含みがあります。この場合の男女は恋愛(もしくはそれに近い)関係にあり、周囲からは歓迎されず秘密を余儀なくされる関係であり、したがって行く末には破局が予想されたりもするでしょう。

健全な明るい男女交際に関する表現に用いられることは少なく、どちらかと言えば大人の男女関係・情事をイメージさせます。このあたりが、ドラマチックな印象を与える所以なのかもしれません。

恋愛小説を得意とした作家・渡辺淳一の『ひとひらの雪』は、男女の道ならぬ恋を描いた作品ですが、この中にも「逢瀬」という言葉が印象的に使われていました。

「逢瀬」の由来

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「逢瀬」を構成する漢字2文字を、それぞれ説明していきましょう。

「逢」は「会」と同じ意味で本来は「(主に人と人が)出会う。遭遇する」ことを指しました。次第に意味が広がっていき「恋愛関係になる。結婚する」の意味も持つようになります。

平安時代に成立した物語『竹取物語』には「この世の人は、男は女にあふことをす、女は男にあふことをす」とありますが、ここでは「結婚する」の意味で用いられていました。「あふ(あう)」は古くから、男女関係を想定した表現だったようです。

一方、「瀬」は直接的には「川の浅いところ。流れが急で速くなっている場所」を指します。このことから大きく意味が転じて「機会。折」「物事に出会う場所」を意味するようにもなりました。

平安~鎌倉時代の歌人・西行の歌に「聞かずともここを瀬にせむほととぎす山田の原の杉の村立」とあります。「たとえ聞こえなくとも、ここをホトトギスの声を待つ場所としよう。山田の原の杉林を」という意味ですが、ここでは「瀬」が川の流れのイメージから大きく離れているのが分かるかと思います。

よく使われる慣用句に「立つ瀬(たつせ)がない」「遣る瀬無い(やるせない)」がありますが、この場合の「瀬」と似た使い方ですね。

これらを合わせて「逢瀬」は「(主に恋愛関係にある男女が)逢う場」を指すようになったと考えられます。

では以上を踏まえて、「逢瀬」の現代的な使い方を例文で見ていきましょう。

「互いに忙しい彼らはなかなか時間が合わせることが適わず、しばらく逢瀬のない日が続いていた」

「彼らはその日、数週間ぶりとなった逢瀬を心ゆくまで楽しんだ」

「社内恋愛中の彼女は、勤務中にも仕事帰りの彼との逢瀬を待ち望んでいた」

「真偽のほどは定かでないが、彼は近頃部下の一人と逢瀬を重ねているともっぱらの噂になっている」

「彼が転勤して以来連絡が少なくなっただけでなく、逢瀬もないことに彼女は苛立ちを隠せなかった」

「逢引」との違い

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「逢引」は「逢瀬」と同じ「逢」という漢字が使われており、さらに男女の恋愛をイメージさせることから、同じ意味ではないかと捉えてしまいがちですが本当にそうでしょうか。

次に、「逢引」という語について見ていきます。

「逢引」の意味と使い方

「逢引」の意味は「男女が隠れて逢うこと。人目を忍んでデートすること。密会」です。

「引」が使われている理由は詳しく分かりませんが、「相引く(あひびく)」という言葉と音が同じというところに注目しましょう。「相引く」は「お互いに引っ張り合う」の意ですから、「逢引」は「男女それぞれがお互いに示し合わせて(相引いて)計画的に逢う」といったイメージでしょうか。

ロシアの作家・ツルゲーネフの短編に『あひびき(あいびき)』(1852年)があります。ヴィクトルとアクーリナの密会を主人公がこっそり覗くという内容ですが、痴話ごとを繰り広げる男女の様子には大ぴらにはできない事情がありげで、いかにも逢引(人目を忍んでデート)の雰囲気を伝えているようです。

例文:

「やや薄暗い店内は、逢引の場所としては絶好だった」

「彼らの逢引に興味はさらさらなかったのだが、飲んだ帰りに偶然見てしまった」

「もっぱら逢引に使っていたホテルは、意外なほど街中にあった」

「逢瀬」と「逢引」、いずれも恋愛関係にある男女の人目を忍ぶ行為を指している点では共通しています。ただし、厳密には「逢瀬」は「瀬」、つまり広い意味での「逢う場」を言い表す言葉です。一方、「逢引」は「引」、つまり2人が「(人目を避けることができるよう)示し合わせて逢う」ことを意味しています。こうした細かいニュアンスに違いがありました。

微妙なニュアンスの違いに注目

以上、「逢瀬」の意味と使い方、また「逢引」との違いについて、解説してきました。

この言葉は「(主に恋愛関係にある男女が)密かに逢う場」のことを言い表す言葉です。一般的には、不倫などの公にできない関係で、男女が他人に知られないように人目を避けて会うといった含みを持ちます。「逢瀬を重ねる」「逢瀬を楽しむ」という形で用いられることが多いでしょう。

近い意味の語に「逢引」があります。同じように「恋愛関係にある男女が人目を忍んで逢うこと」を表現していますが、人目を避けることができるよう2人が示し合わせて、計画的に逢うといったニュアンスが加わった表現です。

2つの語のニュアンスの違いはかなり微妙ですが、それぞれ言い回しや与える印象が異なります。場面に応じて選択するとよいのではないでしょうか。

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keika03